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健康診断でピロリ菌感染の疑いが出たという30代女性からの質問です。過去に子宮の手術や定期的な検査を受けてきたのに、なぜ今になって発覚したのでしょうか?この記事では、ピロリ菌感染の特徴や検査方法、感染時期などについて詳しく解説します。
ピロリ菌とは?感染経路と症状
- ピロリ菌は胃の中に生息するらせん状の細菌
- 主な感染経路は口から口への感染や糞口感染
- 多くの場合、子供の頃に感染し、無症状のまま経過する
ピロリ菌は、ヘリコバクター・ピロリという胃の中に生息するらせん状の細菌です。主な感染経路は、家族内での口から口への感染や、不衛生な環境下での糞口感染です。多くの場合、子供の頃に感染し、無症状のまま経過します。感染しても、胃炎や胃潰瘍、胃がんなどの症状が現れるのは一部の人だけです。
ピロリ菌感染は、日本人の約50%が保有していると言われています。感染率は年齢とともに上昇し、50歳以上では70%以上の人が感染しているとの報告もあります。ピロリ菌は強い酸に耐性があり、胃酸の中でも生存できるため、一度感染すると長期間にわたって胃内に定着し続けます。
ピロリ菌感染の検査方法
- 血液検査、尿検査、便検査などで抗体や抗原を調べる
- 内視鏡検査で胃粘膜を直接観察し、組織を採取して調べる
- 呼気検査で尿素呼気試験を行い、現在の感染の有無を調べる
ピロリ菌感染の検査方法には、血液検査、尿検査、便検査などがあります。これらの検査では、ピロリ菌に対する抗体や抗原を調べることで、感染の有無を判断します。ただし、抗体検査では過去の感染も検出されるため、現在の感染状況を正確に反映しない場合があります。
より確実な検査方法は、内視鏡検査です。胃カメラを使って胃の内部を直接観察し、胃粘膜の状態を確認します。同時に、胃粘膜の一部を採取して組織検査を行い、ピロリ菌の有無を調べます。また、呼気検査(尿素呼気試験)では、尿素を含む薬剤を飲んだ後、呼気中の二酸化炭素を測定することで、現在の感染の有無を判断します。
なぜ今まで発覚しなかったのか?
- 無症状の場合、検査を受ける機会が少ない
- 抗体検査では過去の感染も検出されるため、現在の感染状況がわからない
- ピロリ菌の検査は胃がんリスクが高い人を対象に行われることが多い
質問者の方が今まで定期的な検査を受けていたにもかかわらず、ピロリ菌感染が発覚しなかった理由としては、いくつかの可能性が考えられます。まず、ピロリ菌感染は無症状の場合が多いため、特に症状がない人は検査を受ける機会が少ないかもしれません。
また、血液検査などの抗体検査では、過去の感染も検出されるため、現在の感染状況を正確に反映しない場合があります。ピロリ菌の検査は、胃がんのリスクが高い人を対象に行われることが多く、若い世代では積極的に検査が行われないこともあります。
最近感染した可能性は低い
- 成人になってからのピロリ菌感染は稀
- 感染源となる家族や周囲の人からの感染リスクは低下している
- 衛生環境の改善により、新規感染者は減少傾向にある
質問者の方が最近ピロリ菌に感染した可能性は低いと考えられます。ピロリ菌の感染は、ほとんどが子供の頃に起こり、成人になってからの新規感染は稀だからです。現在の日本では、家族内での感染リスクも低下しており、衛生環境の改善により新規感染者は減少傾向にあります。
ただし、海外渡航先での感染や、感染者との濃厚接触などによる感染の可能性は完全には否定できません。また、免疫力の低下により、長期間無症状だったピロリ菌感染が顕在化する場合もあります。いずれにせよ、ピロリ菌感染が判明した場合は、医師の指示に従って適切な治療を受けることが重要です。
ピロリ菌感染の治療法
- 除菌療法が基本で、複数の抗菌薬と胃酸分泌抑制薬を併用する
- 除菌成功率は90%以上だが、耐性菌の出現により低下傾向にある
- 除菌後は定期的な検査で再感染のチェックが必要
ピロリ菌感染の治療は、除菌療法が基本です。複数の抗菌薬と胃酸分泌抑制薬を併用することで、ピロリ菌を排除します。一次除菌療法の成功率は90%以上と高いですが、最近では耐性菌の出現により除菌率が低下傾向にあります。
除菌に失敗した場合は、二次除菌療法や三次除菌療法が行われます。除菌後は、尿素呼気試験や便中抗原検査などで除菌の成否を確認します。除菌に成功しても、再感染の可能性があるため、定期的な検査が必要です。また、除菌後は胃酸分泌が亢進することがあるため、胃食道逆流症などの症状に注意が必要です。
ピロリ菌感染による胃がんリスク
- ピロリ菌感染は胃がんの最大のリスク因子
- 感染者の約3%が胃がんを発症すると言われている
- 除菌により胃がんリスクは低下するが、ゼロにはならない
ピロリ菌感染は、胃がんの最大のリスク因子です。ピロリ菌に感染している人は、感染していない人に比べて胃がんになるリスクが3~6倍高いと言われています。ピロリ菌感染者の約3%が胃がんを発症すると推定されており、日本では年間約5万人が胃がんと診断されています。
ピロリ菌の除菌により、胃がんのリスクは低下しますが、ゼロにはなりません。除菌後も定期的な胃がん検診が重要です。特に、萎縮性胃炎や腸上皮化生などの前がん病変がある場合は、除菌後も胃がんリスクが高いため、注意が必要です。胃がんの早期発見・早期治療のためには、定期的な内視鏡検査が推奨されています。
まとめ:ピロリ菌感染が判明したら適切な対応を
健康診断でピロリ菌感染が判明した場合は、驚くことなく冷静に対応することが大切です。ピロリ菌感染は非常に多くの人が保有しており、必ずしも胃がんに直結するわけではありません。ただし、胃がんのリスク因子であることは確かなので、医師の指示に従って適切な検査と治療を受けましょう。
除菌療法により、ピロリ菌を排除することができます。除菌後は、定期的な検査で再感染のチェックを行い、胃がんリスクを下げるための生活習慣の改善に努めることが重要です。バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙などが胃がん予防につながります。ピロリ菌感染が判明したことをきっかけに、自分の健康状態を見直し、より健康的な生活を心がけましょう。